gと烙印(@アニメてにをは)

ジブリにまつわる回想、考察を書いていきます。

◆gと烙印◆【02~語り直し】(その2)

(その1)で存在を明かした、もうひとつの「gと烙印」の本文がこれです。
《「G」の烙印(a)~語り難い物語》
 自省的ないしナルシスティックと言われようともかまわない。
 ぼくの生きた行程を、ひとつの未完の物語のようにして考えを巡らすようになったのは、いつからか。
 それはずいぶん昔からのことのように思いこんでいたが、いまあらためて振り返ってみると、それはぼくの人生が、物語として語るには不可能になったまさにその瞬間から始まったことに気づき、キーボードを打つ手も止まり、呆然とする。
 それはつまり、言い方を変えれば、こういうことだ。
 もはや物語の形で記述することが不可能になった段階になってはじめて、ぼくは己の人生を物語として見ようとする欲望に目覚めたのではないか。
 しかしその気づきの瞬間からだいぶ時間が経った。
 おかげでこうやって冷静に、あのときの自分を振り返り得るのだ。あの瞬間ぼくは、生の新たな局面が現れた/あるいは物語にふさわしいときが到来したのだとなかば狂喜していた。そう、一編の異様な小説が立ち上がりつつあるのだと。
 その瞬間の感触は、その瞬間からたちまち時間が過ぎてゆくにつれて必然的に起こるであろう経験の摩耗を経て変化していった。
 読者の理解を得るべく再度言い方を変えると、実際あのときぼくは、自分の人生ではじめて一編の小説にふさわしい材料が眼前に顕現したのだと思っていた。しかしその局面の貴重さに気づかぬまま、そのときどきの対処すべき些事に処理を優先していた結果、あの瞬間を想起しても、もはや記述し得ないものになっていたことにある日気づいたのだ。そう形容し直してみるとやや正確かもしれない。(02はその3へつづく)