gと烙印(@アニメてにをは)

ジブリにまつわる回想、考察を書いていきます。

gと烙印:その10~流れに任せて書いてみたら(その5)

 そう言えばジブリのスタッフで鮨を食いに行った記憶がもうひとつある。「ホーホケキョとなりの山田くん」のときだ。

 まだ作画など実際的な作業が始まる前。高畑さんがいつものように(というか、その様を現実で見るのは初めてだったが)渡された企画が好きになれなくて、「どうしたら好きになれるか、どうしたらこれを映画にする価値があると思えるか」そういうことをツラツラ(ダラダラ)考え続けてる高畑さんに、ただ成す術もなくその場でただ時間をつきあい続けるスタッフ。
 噂で聞いていたとおりだが、これは自分の身に降りかかるとけっこうつらい。「大丈夫か、映画として実現するのか、これ。企画スタートからもう半年過ぎてる。あと一年半しかない。なのに何も決まってない。ここでいまさらポッシャったら、この会社どうやってくんだろう」。

 企画段階から携わる数名のメインスタッフだけが制作現場の一角を陣取って、ボンヤリしてる高畑さんをただ見守っている。傍から見たらグダグダな雰囲気だ。周りのスタッフは外注の仕事をやっていて、なにはともあれ「労働している」。
 こっちは本丸なのに、このいたたまれなさは何だ。メインスタッフはみな一様に表情が思わしくない。すると高畑さんが机の上に乗っけた小さなテレビの画面から目を離してこちらのメインスタッフに振り返り、「がんばれタブチくん、つまらないですねー」とニヤニヤして話しかける。いつになったらいしいひさいちを肯定できるんだ! まだタブチくんかよ! 企画が動くのはまだまだ先だなあ、ああ大丈夫かなあ、この企画。

 企画から実作業へと移る間の一年間、企画準備と言われるこの期間(というか制作期間の半分を準備についやすな)。
 この企画準備の期間は、でも、「もののけ姫」の修羅場とはまた別の、体験できていることの醍醐味があった。
 「解放区」とはこういうやつだと思う。
 焦って必死だったとは言え、アイデアは何でも言えた。その吟味は二三日みんなで考え、というか発酵させ、最終的に高畑さんのジャッジが下る。
 しかし何でも言えた。何でもやれた。高畑さんがやらせようとしたりした。勤めて一年のペーペーの演出助手の僕に「山田くん」の絵コンテの一部を切らせようとした。びびって固辞したが、あれやってみたらどうなっていたかな。しかし一年生助手に本編の絵コンテって。試してるのかマジなのか分からなかった。自由過ぎて怖いわ。(その6へつづく)

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