gと烙印(@アニメてにをは)

ジブリにまつわる回想、考察を書いていきます。

gと烙印:第15話~高畑さんの本領それから塗り絵(その4)

その4
 アニメ素材の出来上がり順番は、作画→セル画→(+背景)→撮影→音入れ+編集→完成+ゼロ号試写→劇場公開、と大雑把に言えばそうなる。
 だから公開が迫った締め切り間際になると、作画は(ようやっと)全部終了しているのに、順番として後のほうの仕事がまだ終わっていなくて、アニメ制作現場の中核とも言える作画ブースがだらーんとしているのに、その周りの部署が必死になっていて、その落差が変な心地になったりする。
 締め切り間際に他の部署をあわてさせているのも、中核の作画の仕事が、締め切りぎりぎりまで仕事を引き伸ばしてしまったからで、だから作画マンたちは、だらーんと呆けて(疲れて)いつつも、周りの部署に申し訳ない気持ちでいる。
 納期にギリギリで仕事をしたときのアニメの、必殺技とも常套手段とも言える手法が、セル画の完成を待たずに撮影に入り、その未完成フィルムで音入れを先に済ませてしまう技だ。そのポイントは、セルにちゃんと色を塗らず、テキトーな色を塗って撮影に回すこと。テキトーな色を塗るのはもちろん暇な人でこの場合もちろん作画マンたちである。
もののけ姫』でもこれをやった。
 作画された用紙をセルにカーボンで複写して、そうすると半透明のセルに作画で描かれた線だけが黒く残る。たとえば人物。半透明に線だけで描かれている人物。
 セル画はたいがい複数枚重ねる風に絵の内容が構成されているので(こんな説明で伝わるのだろうか)、半透明なまま撮影にまわすのはさすがに裏技的に使えない。たとえば人物が何人も入り乱れるとき、どっちが手前でどっちが奥かよくわからない、ぐちゃぐちゃの線の交じり合いで見づらい。
 これで困るのは音入れで、特に人物がセリフを言う時のポイントが分かりにくく、音入れ先取りに支障が出る。だから最低限、重なり具合が分かるように、セリフのポイントが分かるように、最低限のテキトーな色を塗る。

もののけ姫』のときそれは、セルにマジックペンでぐいぐい色を塗った。
 人物だったら、体の部分は服だろうと腕だろうと、それは重なり具合・セリフのポイントに関係ないので、一色に塗りつぶす。顔の部分も一色、せめて髪の毛は黒か灰色にする。セリフのポイントになる口の部分は、唇の輪郭線に沿って、やり過ぎない程度に「口、動いてますよー」とぐいっぐいっと強調した色線を引く。
 塗りつぶしもテキトーだ。シャカシャカシャカとざっくり塗りたくるので、色面はムラだらけである。重なり具合が分かればいいのでそれでよし。
 極太マジックペンを使った、とても杜撰な塗り絵を、作画ブースの大人たちが大真面目に必死になってやる。
 僕もこの塗り絵大会に参加した。(その5へつづく)

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