gと烙印(@アニメてにをは)

ジブリにまつわる回想、考察を書いていきます。

【質問箱】RE~その4

「質問箱」に集まった質問とその回答、その4です。
回答によってはけっこう増補していたり。実況で読んだひとも楽しめるかもしれません。

【前回の、その3はこちら】

animeteniwoha.hatenablog.com


★質問31
石曽根さんや宮崎さん、鈴木さんやジブリスタッフの方々は何時出社何時帰宅ぐらいでお仕事していましか?

■回答31
役職、立場によってひとそれぞれです。
ぼくはぺーぺーの新人でしたから、朝の9時半?だったかな?ひとより30分早く出社して掃除をしてました。

帰宅は、これは演出助手という役職独特で、素材をチェックし、管理する役目なので、たとえばひとりのアニメーターが「このカットだけ終わらせて帰りたい」と言われれば、そのひとが作業を終わるまで演出助手(と制作進行)は帰れないんです。何もすることがなくて時間を持て余すことが多かったですね。気楽に読書したりしているひともいましたが、ぼくは家に帰って静かな環境でないと読書に集中できないので、この待機時間はとても苦痛でしたね。
演出助手、制作進行はいまもこの「ナンセンスな待機」を強いられているのでしょうか?
ぼくがアニメ業界を、給与の面だけではなく、もっと総合的な労働環境の改善が望まれるのは、たとえばこの演助・進行の「無意味な待機の慣行」ひとつとっても言えることです。

帰宅時間ですか?
ぼくの軽々しい発言で労基署が動くと困るので、しかるべきひとの発言を待つとしましょう。

宮崎さんは比較的節度を守って、残業もほどほどという感じでした。
ジブリは(よく知られているとおり)徹夜は禁止していました。

鈴木さんは、ぼくと働いている部署と空間的に離れていたので、その出社退勤の様子は確認できませんでした。

 

★質問32
今後アニメや担当なさった演出やコンセプトとうははどのように変化しそうだなとお考えですか?

■回答32
わたしは役職的には演出「助手」で終わっているので、このご質問にはお答えする資格がありません。 

 

★質問33
演出助手とは監督の演出意図を正確にアニメーターや背景美術、色彩設計へ伝える仕事であるという認識でよろしいでしょうか。その際の苦労話があれば教えてほしいです。

■回答33
その理解は「買いかぶり」です。
そんな「高度な判断」は演出助手に求められていません。
「正確な演出意図」は監督が各部署の責任者と「直接に」話し合いますね。
演出助手は、その打ち合わせを横で聞いて、最低限のことを汲み取っておく。

後日、あがってきた素材をチェックして、あ、これは明らかに間違ってるな、とわかった場合は作成者に差し戻したり、メインスタッフと相談して処遇を決めたりします。

ぼくは入社当時、アニメの作り方を一切知らない素人でした。だから、いきなり「メインスタッフ」のなかに組み込まれて、高度な演出指示を聞く行為は「苦痛」でしたね。
覚えることは膨大にあるし、本当に高度な指示になると、(いま振り返ると)おそらく監督とその相手のスタッフだけが理解していただけなんじゃないかと思います。
周りを取り囲む演出助手や制作進行の上司たちもその高度な演出指示の意味を理解していたか、怪しいものだと思っています。
でもその当時は、「わからないのに・大丈夫か?」という緊張感は半端なかったですね。
そしてそういう新人へのフォローが出来る「デキた上司」はまわりに一切いなかったですね。
それがぼくがスタジオを去る、一番根本的な問題だったと思います。
まわりの演出助手や制作進行はぼくを言い負かすことに必死になるばかりで、それでいて偉そうに振る舞うことに必死で、「新人を育てよう」という意思は一切感じなかったですね。

 


★質問34
フリーランスのアニメーターが、ジブリのお仕事を受けることは可能でしょうか。

■回答34
ぼくは『もののけ姫』と『ホーホケキョとなりの山田くん』しか知りませんが、フリーランスで参加していたスタッフはたくさんいました。 

 

 

★質問35
今もジブリ関係で連絡をとる方はいらっしゃいまふか?

■回答35
いましたが、先日のヤフー記事ですべてが台無しになりましたね。

 


★質問36
アニメ業界でいまでも親交のある人はいますか?

■回答36
あのヤフー記事のおかげで、25年かけて築いたアニメーション業界とのコネクションはすべて消え去りましたね。 
第一、あんな書き方されて、もう関係者に合わせる顔はないですしね。
でもあの記事のゲラにOKを出したのも確かです。
OKを出したのは「こんなひどい書き方をされて・何が起きるか」ということを、コネの消滅と引き換えにしても、経験したかったのです。
またそのときのより深掘りした心境を、このブログ上で書こうと思っています。


★質問37
悪い精神的なショックを作品制作や日常情的なもので受けた際どのように考えたいおうしますか?

■回答37
これは専門家にゆだねるべき繊細なマターなので、医療上の専門的なアドバイスを求めた方がよいと思います。 

 


★質問38
ジブリで描きやすかった作品は?

■回答38
ぼくはアニメーターではなく、演出助手だったので、このご質問にはお答えする資格はありません。

 

★質問39
もののけ姫の演出を担当する際[ここだけは!]という外せない方法はありますか?或いはそんなものはなく柔軟に周りのアイディアは取り入れていたのですか?

■回答39
演出したのは宮崎さんなので、わたしにはわかりません。 

 


★質問40
もののけ姫でアシタカはもちろんエボシ、ゴンザにさえも過去というか設定があるにも関わらず、サンには設定があまりないのは何故なんですか?

■回答40
ぼくの憶測ですが……単に宮崎さんが、設定として詰めることが出来なかったからじゃないですか?
宮崎さんも万能ではないですから。
いろいろな問題をクリアしないまま、見切り発車していた企画だったのは確かです。

宮崎さんは制作を進行させながら絵コンテを(結末を決めず)描いていくスタイルをとるのは有名なことだと思います。
その結果、何が起きるかというと、結末に向けて辻褄が合わないまま・映画が終わる、という結果を招きます。
もののけ姫』は一度や二度観ただけでは理解できない「謎」が仕掛けられていると言われて、実際何度も観てその謎を解こうとするひとがいます。
でも、あれは謎ではなく辻褄を合わせられなかった「作品の傷」に過ぎません。
もののけ姫』でその破綻ぶりを現在進行形で見ていたので、それ以降も、スタッフとして関わっていなかった作品にも関わらず、「あ、ここ、辻褄つけられてないな。傷として残ってる」とたやすく見破ることが出来ます。

それはおそらく皆さんも出来ると思います。
本編以外に存在している、設定資料だとか、ロマンアルバムだとか、「生きろ!」って後付けされたコピーだとかを、すべて・無いものとして・本編だけで観る。そのとき辻褄の合わなさを「謎」として観るのではなく、「作品の至らなさ」として観る。
もうジブリファンはそういう「新たな段階へ・成熟」してもよいように思えます。

 

(その5につづきます)

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