gと烙印(@アニメてにをは)

ジブリにまつわる回想、考察を書いていきます。

【質問箱】RE~その7

「質問箱」に集まった質問とその回答、その7です。
今回ぼくにとって(いい意味で)突き刺さる質問が、最後にまとまって来ましたね。

【前回の、その6はこちら】

animeteniwoha.hatenablog.com

 

★質問61
表現すること、とはどういう事だと思いますか?

■回答61
自分にとってゆずれないもの、なんでしょうね。

別に作家だけが「表現」の独占者じゃないと思います。
会社で働いていく過程で・こだわりが出てきたり、家庭をつくっていく過程で・自分が何を探し求めているか知れてきたり、そうして育てられいく子供たちは、何かへと向かって無数の可能性を開いていく。

それらすべてが「表現」だとぼくは思います。

それでも、あたかも作家だけが「表現」すると思われてしまうのは、作家というものが「現実」に根ざさない《仮構の仮説》を立ち上げていく、「奇妙な営み」をしている面が独特に思われてしまうからかと思います。

それは案外、この記事を読んでいるひとたちにこそ共感を呼ぶかもしれませんね。
《虚構の表現》に憑りつかれるって、最初にも言ったとおり、《ゆずれなくて・やむにやまれず》やっているものですしね。

そしてこれも繰り返せば、日々の営みもまた《表現》なのであり、そこに上下関係はない。
むしろ日常を構成するものすべてが《表現》なのであり、それはそれぞれのひとの《ゆずれない・こだわり》から発するものだと《仮定》することによって、その仮定をどこまでも《延長》していったら、どんな新たな世界が広がるのか……
ちょっと頭の隅において考えておきますね。

 


★質問62
これからアニメーターになる人に言葉を贈るならなんて贈りますか?

■回答62
わたしはアニメーターではなく、演出助手だったので、何とも言えません。
それにアニメが好きだったわけでもないので、何か言葉をかける資格はないように思います。

 

 

★質問63
これから先アニメーションはどのような変化をしていくとお考えですか?

■回答63
昨今の動向を知らないので、そんな予想屋みたいなこと、ぼくには答えられません。
ただ、誰かが見落としているアニメの可能性を、ひとつでも多く・拾うことが出来たら、と思いながら、いまもアニメを見続けています。 

 

 

★質問64
高畑監督と討論することは、膨大な知識のある方でないと出来ないことかと思います。当時、大学では何を学んでいらっしゃったのですか?

■回答64
膨大な知識がないと……と考えてる時点で負けです。
高畑さんの苦手な分野や切り口で、一点突破すればいいだけの話で。

大学で何かを学べば高畑さんと闘える!と思う時点で、また負けです。
ぼくは大学の「外」で生きる糧を得てきました。
東京各所を経めぐって、ひたすら映画を観続けました。
高畑さんが読まないタイプの本を偶然・自主的に読んでいました。
自分でも8ミリフィルムで映画を作り、その過程で「作る側」の視点で映画を捉えなおすことを学び、また人間というものを新たに知り初める機会にめぐまれました。
大学では間に合わせのようにフランス文学を専攻し、形だけで大学を卒業しました。 

それらすべては「何かの・準備」ではありませんでした。
「無駄」に終わるかもしれない、「採算・度外視」な生き方をした果てに、それは偶然転がってきたチャンスだっただけです。
その結果、ぼくの後半生は苦しい局面つづきですけれど、不思議と悔いはありません。

今回、ネットの片隅でちょこっと、たまたま目立ってしまった存在に、あなたはいまごろ嫉妬してどうするんですか。
わたしは25年間、ひたすら同じことを発信してきたのですよ。
どうぞ、あなたはあなたなりに、こつこつと何かに励んで結果を出してください。

 

 

★質問65
今は何のお仕事をされているんですか?

■回答65
最近まで普通にサラリーマンやってました。
つい最近、このコロナのご時世でリモートワークでもやっていけそうだ、ってなって、在宅仕事を始めています。
最低限食えればいいので、それよりお金にならない・書き物仕事を本格的にやりたいので、在宅仕事を選びました。
書き物仕事が終わったら、その先はまた考えます。

 

 

★質問66
テレビは見ないとおっしゃっていましたが漫画あたりなどは読んだりするのですか?また読んでいるとしたら好きな或いはしょうげき「うけた漫画と漫画家はいらっしゃいますか?掲載済みであったなら申し訳ありません。

■回答66
テレビのニュースは観ますが、テレビアニメは観ません。
最近ぱったり漫画も読んでいません。
ジブリ在籍当時は松本大洋「ピンポン」、高野文子「棒がいっぽん」は、アニメにしたら面白いだろうなと思っていました。
「ピンポン」はとてもいいスタッフでアニメ化が実現してよかったです。実写映画「ピンポン」はひどかった。あれでもうアニメ化の可能性はなくなった……と思っていただけに。
高野文子さんも「平家物語」に参加していたので、将来的に高野さんの何かの作品を原作に、いいスタッフたちでアニメ化を実現してくれたらいいなと願っています。

 

 

★質問67
カリオストロの城』のOPの構図の良さや序盤のカーチェイスシーンでの軽さ重さの重力の比較や爆弾を避けようとして命中するシーンが作用、反作用を感じて好きなのですが、一連のカットで思うところはありますか?

■回答67
さっそくわたしのアニメ論【アニメのてにをは】を応用していただいて恐縮しております。
でも、本家本元も負けてはおりませんよ。
いつか将来、『カリオストロの城』が【アニメてにをは】の手にかかるときを、楽しみに待っていてください。 

 

 


★質問68
作品づくりにおいて最も重要だと思うことは何ですか。
過去にツイートされていたらすみません。
また、それが重要だと思う理由もよろしければ教えてください。よろしくお願いします。

■回答68
ぼくにはそんな大それたことは言えません。
作品のはじっこで働いていただけですから。

でもおかしいことはおかしい、って言える労働環境は大切ですよね。どこの世界も。 

 

 


★質問69
質問ではないのですが、できればこれからも度々このような機会を設けていただきたいです。

■回答69
25年も前のアニメ事情しか話せないですし、それをジブリの実態として受け取られるには情報として古すぎると思うのです。
だから、25年前の古びた情報を、質問の形で答えを迫られることには、いま疑問を感じています。

今回は最初の試みなので、そのちぐはぐさを確かめることが出来た、という意味では無意味ではなかったと自分では思うのですが……

それに、二、三、考えさせられる真摯な問いかけもあって、それはありがたいと思いました。

続編があるかどうか、しばらく考えさせてください。

 

(最後の質問・第70問の答えがすごく長くなってしまったので、別立てで「その8」にします)

animeteniwoha.hatenablog.com